働く人の健康と組織開発のはなし①~認知バイアスってなあに?~
- Chieko│労働衛生コンサルタント

- 2025年12月14日
- 読了時間: 4分

はじめに
みなさんは「職場の健康づくり」と聞くと、思い浮かぶのはなんでしょうか?
健康診断、ストレスチェック、労働時間管理といった産業保健の取り組み?
もしくはウォーキングイベントやヘルシーな食堂メニューなどの健康経営の取り組み?
そうしたイメージがあるかも知れません。
だから、「職場の健康づくりと組織開発」と聞くと
「え?いったいどうつながるの?」と思われる方もいるかもしれません。
組織開発とは、とてもざっくり言うと
組織の中で働く人たちが、人々の意識や関係性に目を向けて、
様々な取り組みを行うことで組織全体をより良くしていくこと
です。
多くの場合、企業の成長戦略や組織改革の文脈で語られます。
時代の流れに伴い、組織を取り巻く環境は大きく変化しました。
今までと同じようにひたむきに働いても企業の業績は伸びにくくなり、
人々の価値観や働き方も多様化しました。
私は、そんな複雑化した今日の職場の健康づくりに本当に必要な土台とは、
「困った」「つらい」と思ったときに、安心して“思ったことが言える”風土を育てていくことだと思います。
▼目次
職場の健康には「組織開発」が有効!
みなさんの職場は、何か意見があったとき、思ったことを伝えやすい環境ですか?
周りの目が気になってしまったり、引け目や責任を感じてしまって
せっかくいいアイデアが浮かんだり、何か困り事があっても、なかなか言い出しにくい。
そうした環境では
業務における創造性を伸ばしたり、生産性を向上させるチャンスを逃しやすいだけではなく
実は、働く人の不調に早期に気づくチャンスも逃しているのです。
言い換えると
困っている人がためらわずSOSを相談でき、速やかに必要なサポートにつながれる。
そうした心理的安全性や風通しの良い職場風土の形成に取り組み、職場の健康づくりを促すことは、
企業としての創造性やイノベーションを育むことと同じベクトルを向いているといえるのです。
“人の認知バイアス”への理解
職場の健康づくりにおける組織開発を考えるにあたって
私がまず大事だと思うのは、
「人には認知バイアス」がある
ということを理解することだと思います。
認知バイアスとは、わかりやすく言うと
「人の思考や判断における歪み」すなわち「思い込み」のことです。
思い込みですから、人は自分ではなかなか自覚できないものなのです。
多くの職場の人間関係のトラブルおいて、大元となっていることは
「相手の立場や言いたいことは理解できている」
と思い込んでしまうこと
にあるんじゃないか、と私は推測しています。
だから前もって、認知バイアスの知識を持っておくと
いざ何かことが起きたときに、意識して自分を客観的に見ることができます。
そうすることで、
冷静な判断とより良い解決策につながるでしょう。
特に管理職の方々が、人の認知バイアスをはじめとするコミュニケーション学を学ぶことは重要です。
なぜなら人は、立場の違う相手の気持ちを理解するのがそもそも難しいからです。
だからこそ
「自分たちは自分で思っている以上に
相手のことを分かっていないんだ、
だから正しく理解したい」
と願う気持ちを持ち続けることが、
部下と上司の良好な関係の根幹に必要だと私は考えます。
たとえば、「基本的帰属の誤り」というバイアスをご存じですか。
人は自分の失敗は偶然や外的なものが理由と思いがちで、他者の失敗は内面に理由がある、と考えがちなのです。
つまり、自分のミスは「うっかり、たまたま」だと思い込み、
部下のミスには「だらしない。能力が低い」と考えがちなのです。
ほかにも
・一貫性バイアス:一度相手にある印象を持つと、それに合わせて一貫性を持たせようとしてしまう。(例)一度あいつはだらしないと評価してしまうと常にだらしない、と思い込んでしまう。
・確証バイアス:人は自分が知りたい情報だけを集めて、それに反する事実や証拠は目に入らない。(例)自分が正しくて相手に問題がある、と思い込むとそれに合致した事例を探し出し、それを否定する証拠は無意識に無視してしまう。
などがあります。
認知バイアスは本来人が考え過ぎずに今を生き抜くための“脳の省エネ”機能です。
必ずしも悪いものではなく、むしろ我々の生活をスムーズにしてくれる機能です。
ですが、多様化した組織において立場の違う相手をしっかり理解する必要性がある場合、
第一印象の思考や感情のままに判断を下すことはコミュニケーションの亀裂を生んでしまうのです。
だから、もしあなたが
部下のうまくいかない様子や不調を目の当たりにしたとき
性格や能力のせい、あるいは甘えだと決めつけてしまう前に
一度、意識して立ち止まり、こう問い直す習慣をつけてみませんか?
「もしかしたら、何か訳があるのではないか?」
参考文献:栗山直子『世界は認知バイアスが動かしている』SBクリエイティブ株式会社、2025年
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