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健康診断と栄養の話②~プチ実践編

  • 執筆者の写真: Chieko│労働衛生コンサルタント
    Chieko│労働衛生コンサルタント
  • 2025年12月22日
  • 読了時間: 5分

更新日:1月1日

パソコンの前でデータ解析している女性

はじめに


今回は前回の記事でご紹介した「血液栄養解析」を、実際にご自身の健康診断結果を用いて体験していただく実践編です。分子栄養学の視点から、あなたの健診結果をいっしょに解釈してみましょう。


1. ヘモグロビン(Hb)と赤血球数


<一般的な基準値>

  • Hb(男性:13.7〜16.8 g/dL、女性:11.6〜14.8 g/dL)

  • 赤血球数(男性:435〜555万/μL、女性:386〜492万/μL)


<一般的な見方>

これらが低下すると「貧血」と診断されます。


<血液栄養解析の視点💡>

特に月経のある女性では、Hbや赤血球数が基準値内でも「隠れ貧血」が少なくありません。


<生理学的背景>

赤血球を構成するタンパク質がHbで、その材料にが必要です。

体内の鉄はHb合成に優先的に使われるため、血中Hbが基準値内でも「貯蔵鉄(フェリチン)」が不足していることがあります。

爪が割れやすい、あざができやすい、疲れやすい…

そんな症状がある人は、一般的な貧血の所見がなくても鉄補給で改善するケースがあります。


※本格的な評価にはフェリチンやMCV、MCHCなどの赤血球関連項目を組み合わせて判断が必要です。治療を考える場合は、必ず専門医にご相談ください。


2. AST・ALT


<一般的な基準値>

  • AST:13〜30 U/L

  • ALT:8〜36 U/L


<一般的な見方>

肝機能障害の指標。高値では脂肪肝や飲酒などが疑われます。


<血液栄養解析の視点💡>

  • AST・ALTがともに低め → タンパク質不足を示唆。

  • 両者が基準値内で、ASTがALTより明らかに高い → ビタミンB6不足の可能性。臨床的にはB群全体の不足を考えます。

  • ALT>ASTのパターン → 非アルコール性脂肪肝のサイン。


<生理学的背景>

両者は「アミノ基転移酵素」で、アミノ酸代謝に必須。

ALTは主に肝臓に、ASTは肝臓・心筋・骨格筋などに分布します。

酵素の働きにはビタミンB6が補酵素として必要で、B6不足ではALT活性が落ちやすく、結果的にAST優位になります。


3. γ-GTP


<一般的な基準値>

  • 9〜47 U/L


<一般的な見方>

高値は飲酒や胆道系疾患のサイン。


<血液栄養解析の視点💡>

  • 低めが続く → タンパク質不足の可能性あり。AlbやAST・ALTと合わせて判断します。


<生理学的背景>

γ-GTPは「グルタチオン代謝」に関わる酵素。

グルタチオンは解毒・抗酸化に重要なトリペプチドで、含硫アミノ酸(システイン)を含んでいます。タンパク質や含硫アミノ酸が不足すると、γ-GTPも低めになることがあります。


4. 中性脂肪(TG)


<一般的な基準値>

  • 33〜172 mg/dL


<一般的な見方>

高値は動脈硬化や生活習慣病のリスク。


<血液栄養解析の視点💡>

  • 低めが続く → 低血糖傾向、厳格な糖質制限、エネルギー不足などを示唆。

  • 高値 → 糖質過剰摂取、カロリー過剰、インスリン抵抗性など。


<生理学的背景>

TGは食事や肝臓で合成され、エネルギー源や脂肪として蓄えられます。

糖質を摂るとインスリンが分泌され、脂肪細胞にTGを取り込ませます。

インスリンが効きにくい状態(抵抗性)ではTGが高めに出やすいのです。


5. LDLコレステロール・総コレステロール


<一般的な基準値>

  • LDL:65〜163 mg/dL

  • 総コレステロール:142〜248 mg/dL


<一般的な見方>

高値は動脈硬化リスク。


<血液栄養解析の視点💡>

  • 低めが続く → タンパク質不足、カロリー不足、甲状腺機能亢進などを疑う。


<生理学的背景>

コレステロールは細胞膜・ホルモン・胆汁酸・ビタミンD、

そして脳神経の材料になる重要な物質です。

不足するとホルモンバランスや神経機能に影響し、抑うつや疲労感のリスクも。

またリポタンパク(LDL・HDLなど)を作るためにタンパク質が必要なので、タンパク不足のときはコレステロールも低めになります。


6. 白血球数・分画


<一般的な基準値>

  • 白血球数:3300〜8600 /μL

  • 好中球:50〜60%

  • リンパ球:25〜35%


<一般的な見方>

白血球数は感染や炎症で上昇し、極端な低下は免疫異常などを示します。

  • 好中球比率が高い → 細菌感染を疑う

  • リンパ球比率が高い → ウイルス感染を疑う


<血液栄養解析の視点💡>

白血球数が基準値内の場合、比率のバランスが自律神経の傾向を映すことがあります。おおむね以下の通りです。

  • 好中球比率が高め→ 交感神経優位(ストレス過多・緊張状態を反映)

  • リンパ球比率が高め→ 副交感神経優位(慢性疲労・不安傾向・アレルギー体質などと関連)


<生理学的背景>

好中球はアドレナリン受容体を、リンパ球はアセチルコリン受容体を持ち、自律神経の影響を受けやすいとされています。ただし、感染や薬剤、喫煙、睡眠不足などでも変動するため、一度の結果で判断せず、繰り返し同じ傾向が見られる場合に参考にしましょう。


7. 一般的な健診の見方と血液栄養解析の違い


一般的な健診:

基準値から外れたら「病気の疑い」、外れていなければ「大丈夫」と評価。項目ごとにA判定・B判定…となります。

血液栄養解析:

  • 1つの項目だけでなく、複数項目+症状+食生活を合わせて考える。

  • 基準値より狭い“最適ゾーン”を設定。(たとえば、数値が基準値以内の低めでも、

    場合によってそれは栄養素不足が関連していると推測する。)

  • 病気を探すのではなく、「不足」「予備軍」を拾い上げる。

  • 「今は病気ではないけど、このままだと不調につながるかも」を見つける。


おわりに


健康診断は、結果を受け取って終わりではなく、自分の体調と照らし合わせるためのツールとして役立ちます。


健診結果を「病気探し」だけに使うのではなく、「自分の栄養状態の手がかり」として活用できれば、働く人の“未病”の段階で気づけることが増えます。


「まだ働けるうちに気づくこと」が、これからの長い人生の元気を守ることにつながっていくでしょう。



※本記事で紹介した検査所見の数値について

一般的な基準値に関しては日本臨床検査医学会の公開情報を参照しています。(白血球分画に関しては、STEP内科②感染症・血液 第3版を参照。)血液栄養解析の視点で用いた数値の解釈はOptimal DXなどの情報を参照しています。今のところ学会や公的機関で統一された基準はありません。本コラムは日常の食生活や体調を振り返るヒントとしてご活用いただき、気になる場合は必ず主治医や専門家にご相談ください。 


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